昭和63年(1988年)に創立10周年記念として建立されたブロンズ像です。
 今日、竹園高校のシンボルとして、その優美な姿と「嫩竹」という言葉は、竹園高校の教育理念そのものを象徴するものになっています。
 作者は、当時、本校のPTA会長であった伊藤 鈞(いとう ひとし)氏(筑波大学芸術学系教授、本校第9代PTA会長)です。
 「嫩竹の像」と命名した意味、彫像に込めた思いについて、『竹園高校10年史』に「嫩竹の像を創る」と題して伊藤氏が寄稿しているので、次にその一部を紹介します。


 竹園高校の名に因んで、春、若い生命の萌え出づる瑞々しいわか竹のイメージを人体をかりて表現すべく標題を「嫩竹」とした。嫩の字は少しむつかしいかも知れないが奈良にある嫩草山の嫩であり、新生の美しさを意味している。
 像の周囲360度をめぐり、高低差のレベルとさらに1階から3階までの教室の窓越しのいずれの位置からも眼にふれる作品であること、屋外の変化する自然光の下、こうしたすべての視覚的条件に適合した彫刻作品でなければならない。どこからみても欠点のない美的立体を形成するというのは至難の技といわざるを得ないのであるが、あえて正面性を破ったスパイラルな空間的運動を像に与えることによって、その一つの解決法を試みたものである。
 彫刻は本来無機的な素材による立体であり彫像そのものは動かない。しかしそれを鑑賞する者に生命的なものを連想させるために古来よりさまざまな工夫が行われている。有機的、具象的な形態感で表現すること。ムーヴマン(動感)を与えることも一つの方法である。春陽の中に双肢を伸ばす乙女の像。何故女性像なのかと問われると答えに困るが、校舎の直線的なフォルムに囲まれた環境の中に設置する彫像として、若々しい生命感を宿した、よりしなやかで美しい曲線と量の表現にはやはり女性像が最も適切であると考えたからである。この際あえていえば21世紀の新世界に巣立つ竹園高校にふさわしい現代の「かぐや姫」を創造してみたかったからといってもよい。
 「若い力の創造性と個性のたくましい伸張をはかり、磨かれた知性と優れた体力をあわせもち、…」という本校の教育方針を、もし彫像という芸術手段で表そうとすることはおよそ不可能に近いが、この像を観る人々に少しでも何かそれに近い感情をいだかせるとすれば、作者にとって望外のよろこびというほかない。

(伊藤 鈞 「嫩竹の像を創る」(『竹園高校10年史』))

事務室前より

昇降口より

朝日を背に

ラウンジより